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バランスのよい食事習慣は疾患による死亡リスクを下げることができますQ.バランスのよい食事が健康には大切、とはよく言われることですが、改めて食事のバランスと健康の関係には根拠があるのでしょうか。下のグラフは、45才~75才までの日本人男女約8万人を15年間追跡し、食事習慣と死亡率との関係を明らかにした、根拠あるコホート研究※2の成果です。食事バランスガイド※3(以下ガイド)をものさしとして、バランスのよい食事ができていない順に「1」「2」「3」4」のグループにわけ、最もガイドに沿っていないグループ1の死亡率を1としたときに、他のグループの死亡率がどれだけ下がるかを検討したものです。例えば脳血管疾患では、最もガイドに沿っていないグループ1と比較して、ガイドに沿った食事をとればとるほど死亡率が下がり、最もガイドに沿ったグループ4では死亡率が20%低かったことがわかります。「がん」は、食事以外の要素の影響が大きいので慎重に解釈する必要がありますが、循環器疾患、心疾患、脳血管疾患だけでなく、全死亡率でもガイドに沿った食事習慣は死亡リスクを下げることが証明されました。上述の研究は、世界でもトップレベルの長寿を誇る日本人の食事習慣にも、世界中から注目が集まりました。健康と食品摂取との関連を示した研究は多くありますが、世界中でもっとも明確な根拠が示されているものの一つが野菜の摂取量です。摂取量が多い人は、がんをはじめ多くの疾患や全死亡率のリスクが低いことがわかっています。国民健康・栄養調査(厚生労働省)では、日本人の多くが野菜の摂取量不足で、成人の約7割が目標とする一日350gに達していないとしています。野菜の摂取は世界共通の課題でもあります。一人ひとりの野菜の摂取量を増やすためには、個人に対する食育だけでなく、食の環境整備も含めたさまざまな仕掛けが必要です。コープは健康的な食行動のための「環境を整える」役割を果たせますQ.コープは組合員活動の出前授業などでも食育を展開しています。それ以外ではどのようなアプローチが期待されているでしょうか。2022年の秋に厚生労働省から発表された「健康日本21」の最終報告によると、日本人は、野菜の摂取量目標だけでなく食塩の摂取量削減目標も達成できていません。日本では、幼稚園や保育園、小学校で盛んに食育に取り組んでいます。しかし、子どもの頃に食育を受けたからといっ※2コホート研究とは、特定の特徴を持つグループ(コホート)を長期間追跡し、疾病の要因と発症の関連を調べる観察的研究の手法の一つです。※3食事バランスガイドは、厚生労働省・農林水産省が策定した、主食・主菜・副菜に牛乳・乳製品と果物を加え、料理単位で健康的な食事のとり方を説明したものです。食事バランスガイドの遵守得点と死亡率との関連1.21.11.00.90.80.70.6最もバランスの悪い食事習慣の人たち最もバランスの良い食事習慣の人たちグループ1234全死亡がん循環器疾患心疾患脳血管疾患45-75歳の男性36,624名、女性42,970名を対象に、15年間追跡調査JPHCStudyKurotanietal.,BMJ,352:i1209,2016より作図特集《Interview》17